写真家の視点「もう一つの時間」

一瞬をとらえたはずの写真の中に、

いつかの記憶や、まだ来ぬ未来が息づいている。

風が過ぎた跡に残る静けさ、

誰もいない街角に滲む気配、

瞳の奥に沈む言葉にならない想い。

フォトグラファーの視点は、

見えるものの向こう側に流れる、

もう一つの時間を映し出す。

それは止まらず、失われず、

ただ静かに、ここに在り続ける。

写真は、一瞬を定着させる行為でありながら、その背後には無数の時間が重なり合っています。

被写体が歩んできた過去、シャッターを切る現在、そして作品を目にする人々の未来。

そのすべてが交錯し、一枚の写真の中に「もう一つの時間」として立ち現れます。

写真家の視点は、ただ光景を記録するのではなく、目に見えない時間の気配をとらえるもの。

止まったはずのイメージの中に、確かに流れ続ける時間を感じ取るとき、観る人は写真とともに「もう一つの時間」を生き直すことになるのです。

□ 未だはるか道遠い写真テーマです YOU & 遊 /小林敬司 □